大判例

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名古屋高等裁判所 昭和31年(う)703号 判決

被告人に対する覚せい剤取締法違反の公訴事実の訴因が特定されているかどうかを考えると営利の目的を以て被告人が覚せい剤を譲受けた日時、場所、譲受物件、譲受代金等は明確であるが唯その譲受行為の相手方については氏名不詳眼鏡をかけた三十五、六才の男であることを知ることが出来るのみで氏名が明にされていないに過ぎないものと謂うことになるのである。然し譲受行為が犯罪の構成要件たる本件に於て譲受行為の相手方が特定されることは必要であるが右のように氏名不詳眼鏡をかけた三十五、六才の男から覚せい剤を譲受けたことが明らかに記載されている以上その覚せい剤譲受が特定の者から譲受けた者であることを示したものであつて既に覚せい剤譲受けの事実が日時場所譲受物件譲受代金譲受行為の相手方の性別年齢而も代金が其の者に支払われた旨記載されているとすれば譲受行為の相手方の氏名のみが明でないとしても特定された日時場所譲受物件等と相俟つて他の訴因と識別することが出来る程度に達しているものと認められるから被告人の覚せい剤譲受けの訴因は特定しているものと謂わなければならないのである。然らば被告人に対する本件起訴状に於ける覚せい剤譲受けの公訴事実の記載は訴因を特定しないものとする論旨は理由がない。

(裁判長判事 影山正雄 判事 石田恵一 判事 水島亀松)

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